介護ベッドの機能と種類、選び方レンタルと購入はどちらが得?
介護ベッドとは?
介護ベッドは「特殊寝台」とも呼ばれる福祉用具のひとつで、利用者がベッドから起き上がったり立ち上がったりするときの動作を補助してくれるものです。
●ご利用者さまにとってのメリット
介護ベッドを使うと、自力で体を起こしたり、体の向きを変えたりすることが難しいご利用者さまでもそれらの動作をしやすくなり、ベッドから降りたり、車椅子へ移乗したりすることも簡単になります。寝たきりのご利用者さまにとっては、背中や膝を押し上げてくれる機能のおかげで、体を動かせなくても血流を良くし、ずっと同じ姿勢で寝たきりになってしまうのを防げます。
●介護する方にとってのメリット
介護者にとっても、負担が軽減されるメリットがあります。ベッドの高さや角度を変えることで介助がしやすくなり、腰をかがめるなど、無理な体勢での介護をしなくても良いため、体にかかる負担を小さくできます。
介護ベッドの機能・種類
介護ベッドは、ボタン操作による電動式のリクライニングベッドが主流ですが、その中でも、備わっている機能によって3つの種類に分けられます。
●介護ベッドの機能
介護ベッドには主に、「昇降機能」「背上げ機能」「膝上げ機能」「背・膝連動機能」という4つの機能があります。
・ベッド自体の高さを上下する「昇降機能」
ベッド自体の高さを状況に合わせて上下させれば、ベッドから下りたり、車いすに乗り移るときの動きがスムーズに。おむつの交換や清拭などの介護をするとき、ベッドを高くすると、介護する人の腰に負担がかかりにくくなります。
・上半身を起こす「背上げ機能」
自然に座った姿勢になれるので、食事をしたり、テレビを見たりしやすくなります。水平で寝るのが辛い方は、いちばん楽な位置までご自身で背上げをし、その状態で過ごすことができます。ベッドからの移動もスムーズになります。
・姿勢を安定させる「膝上げ機能」
ベッドの膝の部分を持ち上げる機能です。横になっているときや座っているとき、両足をぴんと伸ばすより、膝を少し曲げたほうが楽ですよね。この姿勢を自然に保つのが膝上げ機能です。
・足側へのずり落ちを防ぐ「背・膝連動機能」
背と膝の上げ下げを組み合わせることで、体が足側へとズルズル下がるのを防ぎ、圧迫感が少なく姿勢のずれにくい起き上がり動作ができます。
●介護ベッドの種類
介護ベッドは、ベッドに搭載されているモーターの数によって機能性が異なります。目的にあわせて選ぶ必要があります。
・1モーターベッド
ベッドの「背上げ機能」、「昇降機能」、「背・膝連動機能」のいずれかが付いているタイプです。細かい調整は難しいですが、比較的体を動かすことができる人の起き上がり補助として使用するのに適しています。
・2モーターベッド
ベッドの「背上げ機能」+「昇降機能」もしくは「背・膝連動機能」+「昇降機能」が備わっているタイプです。自力での起き上がりと立ち上がりのどちらも不安のある人におすすめです。
・3モーターベッド
「背上げ機能」+「昇降機能」+「膝上げ機能」の3つが備わっており、それぞれ個別に細かい調整を行うことが可能なタイプのベッドです。自力で寝返りを打つのが難しい人や、ベッドで過ごす時間が長い人を介護する場合は、3モーター式が良いでしょう。
介護ベッドの上手な選び方
介護ベッドはメーカーも多く、機種も豊富です。それだけ機能が異なるということですから、ベッドを導入して何をしようとしているのかが大事となります。ただ単純に「障害があるからベッド」ではありません。使い方を間違えるとベッドは寝たきりを作る原因にもなりかねません。
介護ベッドを選ぶときは、機能や種類以外にも考慮しなければならないことがあります。利用する人の体の状態や設置する部屋の大きさなど、気を付けたいポイントをお伝えします。
●安全性
安全性に信頼がおけるかどうかという点は、介護ベッド選びにおいても重要です。体の不自由な人が使用するため、誤った操作による転落事故や挟まれ事故が起こるおそれがあるからです。そういった事態を避けるために、JIS規格(日本工業規格)によって製品の強度や形状は細かく規定されています。例えば、ベッドの柵部分にご利用者さまの体の一部が挟まるという事故をなくすため、柵部分の間隔が開きすぎないよう規定されたり、ベッドのグリップ部分にご利用者さまの衣服が絡まないよう、突起物のないものが設計されたりしています。JIS認証を受けた製品は、製造工場の審査と、完成された製品の審査の両方に合格しているため、安全性がしっかり担保されているといえます。介護ベッドを選ぶ際は、JIS規格が表示されている製品かどうかを必ずチェックするようにしてください。
●大きさ
べッドは大きい方が快適です。落下するという恐怖感も少なくなります。身体も多くの場合動かしやすくなります。しかし、部屋の大きさを考えないで導入すると、車椅子が動けなかったり、介護者が身動きできないなどというようなことも起こりかねません。
ご利用者さまの体型やベッドを置く部屋の広さを考慮し、適切なサイズを選びましょう。介護ベッドには通常、幅91㎝・長さ191㎝ほどのレギュラーサイズ、幅83㎝・長さ180㎝ほどのミニサイズ、幅100㎝・長さ205㎝ほどのロングサイズがあります。
●介護ベッド付属品
ご利用者さまの身体の状態により、ベッドまわりの付属品も必要なものを確認しましょう。付属品には、ベッドからの立ち上がりを補助する手すりや、ご利用者さまのベッドからの転落や寝具がずり落ちるのを防ぐサイドレール、ベッドの上で食事をする際に使用する介護用ベッド専用のテーブル、ベッドから車椅子などに移動する時に使用する移乗用ボード、マットレスなどがあります。
・マットレス
マットレスにはさまざまな硬さがあり、ご利用者さまの身体状況に応じて適したものを選ぶ必要があります。ある程度自分で移動でき、支えがあれば自立できる人には、起き上がりや移動がしやすい適度な硬さのマットレスが適しています。マットレスが柔らかすぎると、身体が沈み込み、座位をを保ったり寝返りを打ったりすることが難しい場合があるためです。自分で起き上がることはできても、ベッドから車椅子への移乗に介助が必要な人の場合、適度な硬さに加えて、縁がしっかりしており、姿勢を安定させやすいマットレスが適しています。そのほうが身体を起こしている時間が長くなりやすいためです。寝たきりの人には、床ずれ防止用具として使われる体圧分散マットレスを選びましょう。一般的なマットレスよりも柔らかく、体重が一カ所に集中せずに分散しやすいという特徴があります。床ずれのリスクを極力回避したい人におすすめです。硬さ以外のポイントとしては、撥水加工や抗菌加工、通気性、丸洗いが可能かどうかという点が挙げられます。
・サイドレール
サイドレールとは、身体がベッドから転落したり、寝具が落下しないようベッドの両側に設けられた柵のことを言います。差し込み式となりますので立ち上がり時など、支えとして使用することは適切ではありません。(立ち上がり時など、支えとしてお使いになる場合は介助バーをお使い下さい)サイドレールは「隙間への挟み」や「強い接触」等の事故要因となる事が心配されます。そこで隙間をふさぎ衝撃を緩和するソフトカバー付を使用する事もあります。
・介助バー
一部が可動式になっているベッド柵です。商品によりますが、およそ120°程度まで開く事ができます。ベッドへの差し込み後、しっかり固定できるので体重をかけたり、力を加えても安定しています。ベッドからの立ち上がりを助けるので、ポータブルトイレ等と一緒に使うのもオススメです。
・サイドテーブル
家族の介護をする時や、ベッドの上で過ごす事が多くなって来た要介護者には、介護用のベッドサイドテーブルがあると便利です。ベッドの上で読書や食事をするときに快適に過ごせます。
・移乗用ボード(スライディングボード)
ベッドから車椅子、車椅子からベッド等へ移乗する際に使う福祉用具です。身体を傾けその下にボードを差し込み、身体を滑らせるように移乗するため、比較的小さな力で移乗させることができます。スライディングボードを使う場合、ベッドであれば高さが変えられること、車椅子であればアームレストやレッグサポートがはずせることが条件となります。
介護ベッドのレンタルサービス
介護ベッドなどの福祉用具は、介護保険が適用されるため、安い料金でレンタルすることができます。購入とレンタルのどちらがお得か、比較してみました。
●福祉用具のレンタルサービスとは
介護保険を利用することで、特定の福祉用具を安くレンタルできるというサービスです。貸与の対象となっている福祉用具には、介護ベッドとその付属品、車椅子とその付属品、床ずれ防止用具、歩行器、自動排泄処理装置などがあります。要介護度によって保険が適用される福祉用具が異なるので、事前に確認しておきましょう。
●レンタルサービスの利用方法
レンタルサービスを利用する場合、まずは介護支援専門員にケアプランの作成を依頼し、製品選びの相談をします。専門員のアドバイスを基に製品を選んだら、納品日時や料金の支払い方法を決めます。納品された福祉用具を確認した後に正式な契約を結ぶと、月々のレンタル利用料金を支払うだけで、その福祉用具を使用できるようになります。納品の際は、被介護者に合った製品かどうかをよく見極め、納得した上で契約を結べるよう、気になる点があれば専門員に質問しましょう。
●介護ベッドのレンタルと購入の比較
要介護度2以上の方であれば、料金の1割〜3割のみを自己負担すれば良いので、高額な介護ベッドを購入するのが難しい場合はレンタルで費用を抑えることが可能です。介護ベッドを購入した場合、例えば、3モーターベッドは30万円以上するものが多いですが、レンタルの場合、メーカーや製品によって価格に差はあるものの、月に1,500円程度(負担割合:1割)が相場です。長期の使用を前提とする場合以外は、レンタルのほうがお得になるケースも多いでしょう。
介護者・被介護者の生活に合った介護ベッド選びを
介護ベッドは、被介護者にとっても介護者にとっても重要な役割を果たします。数ある製品の中から、機能性や利用者との相性をよく見極めて選ぶのは簡単なことではありませんが、生活の一部になるものなので、じっくり検討してから納得のいくものを選びましょう。介護者の負担が軽減されれば、被介護者にとっても自立の助けとなります。